BRITISH TANK
- 重量:62.5t 車体長:8.30m 全幅:3.52m 全高:3.04m 履帯幅:63.5p エンジン:4ストロークV型12気筒Perkins CV-12液冷ディーゼル1基 出力:1,200馬力 最高速:整地59q/h 航続距離:547.17q 携行燃料:1,592リットル 主武装:55口径120oライフル砲L30 1門、L37A2 7.62o機銃、7.62oL94A1(EX-34チェーン・ガン)同軸機銃 乗員:4名
- ※製造所:ヴィッカーズ・ディフェンス・システムズ(現BAEシステムズ・ランド&アーマメンツ社ランド・システムズ・ウェポンズ&ヴィークルズ部門)
CLIP | ◎チャレンジャー致死性向上計画(Challenger Lethality Improvement Programme: CLIP)は、現在のL30A1ライフル砲を、現在レオパルト2やM1エイブラムスに使われているラインメタル Rheinmetall社製スムースボア smoothbore 120o砲に置き換える計画であった。スムースボア砲の採用により、チャレンジャー2はNATO標準弾薬を使用できるようになり、劣化ウラン弾のように政治的、環境的な反対を受けないタングステンベース tungsten-basedの運動エネルギー貫通弾を含む弾薬を使用することができるようになった。イギリスにおける120mmライフリング弾の生産ラインは何年か前に閉鎖されたため、L30A1用の既存の弾薬の在庫は有限である |
試験的に120o滑腔砲を装備したチャレンジャー2 | ◎この滑腔砲は L30A1 と同じ長さで、ライフリング砲のクレードル cradle、サーマル・スリーヴ thermal sleeve、ボア・エキュヴェーター bore evacuator、マズル・トリファレンス・システム muzzle reference systemが装備された。初期の試験では、ドイツのタングステン tungsten製DM53弾が劣化ウラン弾のCHARM3よりも効果的であることが判明したようである。また、再生型NBC防護システムを含む他の改良も検討された |
HAAIP | ◎チャレンジャー2の自動車部品の更新は、進行中の重装甲自動車改善プログラム(Heavy Armour Automotive Improvement
Programme: HAAIP)の一環として実施されており、2031年まで継続され、チャレンジャー3プログラムと一致することが期待されている。
HAAIPプログラムは“既存の就役中のチャレンジャー2戦車に機動性と安定性を高めるために行われ、その両方が、車両をチャレンジャー3へと更新する新しいタレットとシステムの基礎を提供するために重要”と述べてる。HAAIPはすでに、動作寿命を向上させた清掃可能なエア・フィルター
air filtersの使用を通じて、空気ろ過システム air filtration systemのアップグレードにつながり、2018年10月のサイフ・サレア3演習
Exercise Saif Sareea 3でテストされた。BAEシステムズに授与されたHAAIPプログラムは、チャレンジャー2、DTT、CRARRV、TitanおよびTrojanに共通のエンジンとサスペンション規格を適用し、信頼性を向上させることが目的であった。しかし、国防担当大臣
Minister of State for Defenceは2022年4月、CTCS(乗員温度制御システム Crew Temperature
Control System)用の新しい冷媒が見つかってから、チャレンジャー2、チャレンジャー3、CRARRVに共通エンジン(ビルド・スタンダード
build standard)を適用することを発表した。パワートレイン powertrainに関しては、BAEシステムズは既存のCV12エンジンをアップグレードするか、これを代替設計のものと交換するかを評価していた。キャタピラー・ディフェンス
Caterpillar DefenseによるCV12のアップグレード案は、電子制御コモン・レール燃料噴射 Common Rail Fuel Injectionを搭載し、エンジンヘルス・モニタリング(HUMS)を導入するものであった。これにより、最大出力が1,200bhp(2,300rpm)から1,500bhp(2,400rpm)に向上し、戦場の排煙が減少し、フリートの信頼性と稼働率が向上する。この情報が発表されて以来(2019年2月)、コモン・レール燃料噴射とHUMSの装着に関して公的にさらなる情報が発表されないままとなっている。エンジンやトランスミッション・ユニット
transmission units自体も近年再製造されており、CV12-6AエンジンをCV12-8Aビルド標準に変換するための部品や機器も購入されている。HAAIPの入札調達を支援する広報は、チャレンジャー3にアップグレードするチャレンジャー2とCRARRVに新しいCV12-9Aエンジン・ビルド標準が使われる予定だと述べている。DE&S、RBSL、バブコック
Babcockによって行われる、基本的なチャレンジャー2の車体とautomotive 部品を更新する作業は、これらがチャレンジャー3に改造されるのに先立って、2021年7月に開始された。HAAIPで交換された機器は、整備性を確認され、必要であれば修理され、既存のチャレンジャー2フリートで再利用できるよう返却される。車体はまた、超音波検査、溶接の修理、再塗装を受ける。HAAIPの全体的な範囲には以下のものが含まれる チャレンジャー 3とCRARRVのためのアップグレードされた CV12-9Aエンジン 第三世代ハイドロガス・サスペンション Hydrogas Suspension インライン・アキュムレータ inline accumulatorsを備えた新しい油圧式トラック・テンショナー(Hydraulic Track Tensioners: HTT) 改良された電気式コールド・スタート・システム Improved Electric Cold Start System(インテーク・マニホールド・ヒーター Intake Manifold Heater) トランスミッションの改良のために装着された不特定の新しい部品 新型メイン・エンジン用エア・インテーク・フィルター 新しい高効率ラジエーター(596セット)とファン(マウントとドライヴ・システムを備えた294のトリプル・ファン・セット)を取り付け、メイン・エンジンとトランスミッションの冷却を改善した。これらの新しいより近代的なアセンブリは、冷却能力を向上させ、改善された空気の流れの効率によってエンジン燃料カットバック・モード fuel cutback mode(メイン・エンジンとトランスミッションの冷却能力を超えた場合、エンジン出力を低下させる)を低減する。新しい冷却ファンの契約をAMETEK Airtechnology Group(現在のデザインのサプライヤー)に、新しいラジエータの契約をキャタピラーに授与した。2022年1月現在、6両のチャレンジャー2がチャレンジャー3への改造に先立ち、automotiveのアップグレードを受けたと報告されている。 |
CSP/LEP/チャレンジャー3 | ◎2005年にMoDはチャレンジャー2の耐用年数を2030年代半ばまで延長し、その機動性、殺傷力、生存性をアップグレードするための能力維持プログラム(Capability
Sustainment Programme: CSP)の必要性を認識した。CSPは2020年までに完了することが計画されており、120o滑腔砲の装着を含むCLIPからのすべてのアップグレードを結合する予定だった。2014年までに、CSPプログラムは、老朽化した部品を交換し、戦車の耐用年数を2025年から2035年に延長するという同様の範囲を共有する寿命延長プログラム(Life
Extension Programme: LEP)に取って代わられたが、120o滑腔砲は放棄されたようであった。2015年、イギリス陸軍はLEPの範囲についての洞察を提供し、それを以下の4つの主要分野に分割していた 監視と目標捕捉:指揮官用プライマリー・サイト commander's primary sightと砲手用プライマリー・サイト gunner's primary sightのアップグレード、および熱観測・砲撃用サイト(thermal observation and gunnery sights: TOGS)を第3世代の赤外線画像に置き換えること 武器管制システム Weapon control system:火器管制コンピュータ fire control computer、火器管制パネルfire control panel、火器処理装置 gun processing unitのアップグレード 機動性:第3世代ハイドロガス・サスペンション third-generation hydrogas suspension、改良型エア・フィルター improved air filtration、CV-12コモンレール燃料噴射 common rail fuel、トランスミッション、冷却などのアップグレード 電子構造:砲手制御ハンドル gunner's control handles、映像配信アーキテクチャ video distribution architecture、汎用車両アーキテクチャ generic vehicle architectureに準拠したインターフェース、オンボード処理の増加、ヒューマン・マシン・インターフェース human machine interfaceの改善などのアップグレードが行われた MoDはまた、MUSSとラインメタルのROSY Rapid Obscurant Systemを含むチャレンジャー2のアクティヴ保護システム(active protection systems: APS)の評価を開始。2016年8月、MoDは寿命延長プログラムについて、複数の企業に評価段階の契約を与えた。これらには、チーム・チャレンジャー2(BAEシステムズが主導し、ジェネラル・ダイナミックス General Dynamics UKを含むコンソーシアム)、CMI Defence and Ricardo plc、ラインメタル、ロッキード・マーチン Lockheed Martin UKが含まれていた。11月に、MoDはBAEシステムズとラインメタルが率いる2チームをショートリストし、当時£650,000,000($802,000,000)と推定されるLEPに参戦することとなった。2018年10月、BAEシステムズは提案されたチャレンジャー2 LEP技術実証機“ブラックナイト Black Night”を公開した。新たな改良として、Safran PASEO司令官用サイト、砲手用レオナルド Leonardo赤外線イメージャー、レオナルドDNVS 4ナイト・サイト night sightが導入された。砲塔はまた、トラヴァース traverse速度の向上と広いスペースを確保するための改造を受け、さらに電力を生成して蓄えるための回生ブレーキ regenerative brakingも装備された。他の強化はレーザー警告システムとアクティヴ保護システムを含んでいた。数ヶ月後、2019年1月にラインメタルは完全デジタル電子アーキテクチャ、司令官と砲手用のデイ・ナイト・サイト day and night sights、Rheinmetall L55 120o滑腔砲を備えた完全に新しい砲塔の開発を含む提案を発表した。ブラック・ナイトよりも実質的なアップグレードである一方、この砲塔はラインメタルの主導で開発され、英国MoDの資金提供を受けておらず、MoDのLEP要件の一部でもない。2019年6月、BAEシステムズとラインメタルは、ラインメタルBAEシステムズ・ランド(Rheinmetall BAE Systems Land: RBSL)と名付けられた、イギリスに拠点を置く合弁会社を設立した。合併にもかかわらず、同社は依然としてLEP契約に対して2つの別々の提案を提示すると予想されたが、DSEI 2019でRBSLは代わりにラインメタル提案だけを展示することを選択した。 2020年10月、MoDはチャレンジャー2 LEPを追求する代わりに海外から新しい主力戦車を購入することに反対し、アップグレードされたチャレンジャー2はレオパルト2やM1エイブラムスと“同等-そして特定の分野では優れて”いると述べた。2021年3月22日、MoDは待望の指令文書“競争時代における防衛”を発表し、148両のチャレンジャー2をアップグレードしてチャレンジャー3とするイギリス陸軍の計画を確認した。MoDは2021年5月7日にRBSLとの契約が£800,000,000($1,000,000,000)で署名されたことを確認している。新しい120o滑腔砲を含むラインメタルのより広範なアップグレード案が受け入れられていた。アップグレードされた戦車の初期運用能力は2027年までに、完全な運用能力は2030年までに宣言される見込みである |
その他の就役中のアップグレード | ◎ 2017年12月15日、BAEシステムズはLEPとは別に£15,400,000の暫定ソリューションの一部としてチャレンジャー2の赤外線画像システムの保守契約を獲得した。2019年10月、タレス Thalesが同社のキャサリン・メガピクセル(Catherine Megapixel: MP)赤外線カメラを供給することが発表された |
チャレンジャー2ドライヴァー・トレーニング・タンク Challenger 2 Driver Training Tank |
◎チャレンジャー2ドライヴァー・トレーニング・タンク(DTT)は、チャレンジャー2の車体をベースとしる。砲塔は、インストラクターと最大4名の訓練生を収容するための固定錘式上部構造に変更された。デザインはチャレンジャー1由来のチャレンジャー・トレーニング・タンク(Challenger Training Tank: CTT)に似ている。上部構造に重りをつけることで、運用されている標準的な戦車の重量(したがって運転特性も)を再現している。DTTは22両がイギリスで、2両がオマーンで運用されてる |
タイタン Titan | ◎タイタンの装甲橋梁層は、チャレンジャー2の走行装置をベースに、チーフテン装甲車発射橋(Chieftain Armoured Vehicle Launched Bridge: ChAVLB)を置き換えたもの。タイタンは2006年にイギリス工兵隊で運用が開始され、33両が運用されてる。タイタンは、長さ26mの橋 26-metre-long bridge 1基、または長さ12mの橋 12-metre-long bridge 2基を搭載することができる。また、ブルドーザーの刃を装着することも可能 |
トロージャン Trojan | ◎トロージャン装甲車王立工兵車(Trojan Armoured Vehicle Royal Engineers)は、チーフテンAVRE(Chieftain AVRE)の後継として設計された戦闘技術車である。チャレンジャー2のシャーシを使用し、多関節ショヴェル・アーム articulated excavator arm、ドーザー・ブレード dozer blade、フェイシン用アタッチメント・レール attachment rails for fascinesを搭載している。2007年から運用を開始し、33両が生産された |
チャレンジャー2E | ◎チャレンジャー2Eは輸出用の戦車である。ジャイロスタビライズ・パノラマ照準器SAGEM(gyrostabilised panoramic SAGEM)MVS 580とジャイロスタビライズ・デイ・サーマル照準器(gyrostabilised day/thermal sight)SAGEM SAVAN 15(いずれもアイセーフ・レーザー・レンジファインダー eye-safe laser rangefinder付き)を搭載した新しい統合武器管制・戦場管理システムを装備してる。これにより、共通の交戦手順でハンター/キラー作戦を行うことができる。オプションのサーヴォ制御式オーヴァーヘッド武器台 servo-controlled overhead weapons platformは、コマンダー・サイトにスレーブ接続することで、砲塔から独立した操作が可能。パワー・パックは、横置きのMTU MT883ディーゼル・エンジンとRenk HSWL 295TM自動変速機を組み合わせた1,500馬力(1,100kW)の新しいユーロパワーパック EuroPowerPackに変更された。車両性能と耐久性の両方が大幅に向上してる。小排気量ながらパワフルなユーロパワーパックには、砂漠での使用で実証された冷却システムと吸気フィルター・システムが標準装備されてる。車体の空きスペースは弾薬の収納や燃料の補給に利用できるため、航続距離は550qまで伸びた。このパワーパックは、これまでUAEに納入されたフランス軍のルクレール戦車や、フランス軍で運用されているルクレール回収戦車に搭載されていたものである。さらに、ユーロパワーパックを発展させたものが、最近、韓国のK2ブラックパンサー Black Panther戦車に搭載され、連続生産されている。BAEシステムズは2005年、2Eの開発と輸出販売を停止すると発表した。これは、2002年のギリシャ陸軍のコンペでレオパルト2が勝利し、2Eが選定されなかったこととメディアで関連付けられている |
CRARRV | ◎チャレンジャー装甲修理回収車(Challenger Armoured Repair and Recovery Vehicle: CRARRV)は、チャレンジャー1の車体をベースに、戦場で損傷した戦車を修理・回収するために設計された装甲回収車である。1985年に発注され、1988年から1993年にかけて納入されたCRARRVは、その後CV12-5C/6CエンジンとTN54Eトランスミッションからなるチャレンジャー2のパワートレインを使用するよう改良されている。イギリス陸軍は80両を発注した。オマーンはチャレンジャー2戦車の取得を補完するため、4両のCRARRVを購入した。CRARRVが初めて実戦投入されたのは、第一次湾岸戦争に先立つ1991年のグランビー作戦 Operation Granbyであった。そののち、2003年のイラク侵攻作戦(テリック作戦 Operation Telic)で、標準的なチャレンジャー2とともに投入された |
- ※運用国(アルファベット順、Image courtesy of 世界の地図・世界の国旗)
オマーン | |
ウクライナ | |
イギリス |
- ※参考文献
- 戦車マガジン3月号別冊「AFV 94 1994 世界の戦車年間」デルタ出版(1994年)
- ウィキペディア
Update 23/01/27